女の子がいました。
ちょっと不器用だけど、
生き物が好きで、
植物が育つのを見るのが好きでした。
そんな女の子に、お祖父さんは
自分の畑で育てるとうもろこしの種を三粒くれました。
女の子はよろこんで、
隣の空き地の隅っこに撒きました。
やがて、
細長い、今にも干上がってしまいそうな芽が出ました。
女の子は育てかたを知らなかったので、
ただただ見に行きました。
お水だけは、地面がひび割れてくると
運んできてかけてやりました。
とうもろこしより強そうな草が邪魔しにきたら、抜いてやりました。
とうもろこしはゆっくり、
毎日毎日育っていきました。
そこは、ススキの多い痩せた土地のはしっこで、そのためか、とうもろこしの茎も細くて背も小さかったのですが、
女の子は楽しみに毎日見つめていました。
ある日、小さなほうきのような花が咲きました。
それから、葉の根本から、
一つ、また一つと小さなとうもろこしのふさが現れました。
女の子は大喜び。
兄弟たちもみに来ると、
『私のとうもろこしがなった。』と
自慢しました。
暑くなりましたが、とうもろこしはちょっとずつしか大きくなりません。
女の子は心配です。
おじいさんやおばあさんに聞いても、
『肥料やってないからねえ』と言われるばかり。
水をあげながら、見守ることしか
女の子には出来ませんでした。
ある日、おじいさんとおばあさんがきて、
『お前のとうもろこしもとろう』といいました。庭の畑も立派なとうもろこしが実っています。
女の子のとうもろこしは相変わらず小さかったけれど先っちょの髭が黒く縮れてきていたので、おじいさんやおばあさんは声をかけてくれたのです。
とうとう!!
女の子はずっと見守ってきたとうもろこしを
もぎました。
一つは小さいけれど固く芯があり、パキッと音をたてました。
あと二つは、小さく干からびた芯と髭以外何もはいっていませんでした。
手にもってもぶかぶかし、
ずるっと茎から離れ、女の子は
がっかりしました。
気を取り直し、
女の子は、手元に残った小さなとうもろこしの皮をこじ開けてみました。
すると、ほんの数粒しか実がついていません。その数粒だけはキラキラツヤツヤして、
プツッと弾けそうなほど元気に張り切っていて大きいのですが、あとはでき損ないか、実もついていないのでした。
後ろからのぞいた弟が
『あれ、全然実がついてないじゃない。』
と言いました。
女の子が肩を落としていると、
おばあさんが言いました。
『蒸そうね。ちょっとしかついてないのは、甘いよ。』
女の子は頷いて、おばあさんにとうもろこしを渡しました。
しばらくして、おばあさんは蒸し上がったとうもろこしを持ってきてくれました。
女の子は受け取って、
一粒かじってみました。
とうもろこしの実はブツンと弾けて、
甘くて甘くて、何粒分の味が
一粒にぎゅうぎゅう入ってるみたいでした。
女の子は『甘い!美味しい!』と叫びました。
弟が『ちょうだい!』とやって来て
一粒かじると、
『本当に甘い!』とふざけて踊りました。
女の子は、そのあと、畑で採れた
キレイなとうもろこしも沢山食べましたが、
あのほんの数粒の、
私のとうもろこしの方が
断然甘くて美味しかった。
とこっそり思いました。
おわり
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今思えば、もしかして、
これって自然農法との出会いじゃない?