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山のお肉のフルコース~パッソ・ア・パッソのジビエ料理

門前仲町のイタリアン、『パッソ・ア・パッソ』のシェフ有馬邦明さんの本で、山と渓谷社から発行。

ジビエにまつわる愛とこだわりが詰め込まれてて、面白かった‼

ジビエとは、フランス語で食べられる野生鳥獣、或いはそれらの料理を差します。
猟師さんの処理の仕方によって肉の鮮度、状態がまるで変わってくるというのは想像できるけど、
実は想像以上に、処理のスピードも環境も、仕留め方の精度も問われるんだなあと感心。山のプロ、人としての折り目ただしさを併せ持った人の獲物しか、よい食材にならないというジビエの率直さ。

そういう猟師さんへのリスペクト、
自然環境を鑑みつつ
生き物の命を奪い、
食材として頂ききることへの
プロ意識、使命感、情熱がひしひしと伝わってくる。

猪、ウズラ、ウサギ、鹿、鳩、キジなどよく聞くもの以外にも、ツキノワグマ、ヒグマ、アナグマ、タヌキなどのエピソードと料理の写真もふんだん。

例えば、ツキノワグマの脂は融点が低く、白く美しい。癖がなく生クリームのように使えるなんて、知るよしもなかった。それでつくったアイスやビスコッティも写真があり、とても美味しいのだそう。。

技術と心映えのある猟師さんがご高齢になってきていたり、環境問題による野生鳥獣の減少、逆に保護政策による食物連鎖のアンバランス傾向などに直面し、食の現場からみた社会的、環境的問題も語られており、単に食の楽しみだけを追う本ではなく、哲学をもった職人の奥行きを感じさせてくれた。
シェフの人となりに興味ひかれ、食べに行きたいと思った。

しかし、個人的には、
昨今のジビエは更に難しい状況に晒されていると思う。

原発事故の影響から、東北~甲信越地方(ざっくりですみません)の野生茸などには、規制値をはるかに越える放射性物質が検出されており、栗やドングリなど、動物に好まれる木の実も汚染されやすいといわれている。そうした地域の野生鳥獣は汚染のある植物、昆虫、茸類を食べ続けていることから、生体濃縮が進んでいると考えられる。

現実に熊や猪から高濃度汚染が確認されている地域も。

これもまた人間による汚染だが、
風評を避けるといって、見ないふりをして
食べ続けるという情緒的対応がマジョリティである昨今、
これまでジビエにまつわる問題に目を背けずに来られた有馬シェフが
どのように考えておられるのか、
聞いてみたい気もした。

料理とは味だけではない。
ストーリーを食することも、
料理の喜びのひとつだ。
有馬シェフの文中にもそのように書いてある。
私も全く同感だ。

ジビエはエピソードにとみ、
ストーリーがある食材として非常に魅力的だから、尚更そのストーリーの抱える矛盾、不穏当に触れるか、触れないか、
食べるものとしては気になるところでもある。